呼び寄せ介護という選択肢

遠距離介護は、介護者の負担が減ることや、親も引っ越しなどをせずに済み、今の住み慣れた地域での生活が守られるというメリットがあります。しかし、どんな場合でも遠距離介護が成立するわけではありません。まず、介護のために親の家に出向く頻度が高くなった場合です。介護度が低いと、適宜通ってサポートをすれば良いですが、日常生活がままならず、手助けが必要になることが増えることも考えられます。遠方の場合、交通費の負担も増えます。また、長期間滞在する時も、仕事を休まざるを得なくなります。

次に、親が認知症を発症した場合です。認知症は徘徊や幻覚なども引き起こします。家族が来ている間は、気が張っていたり、「しっかりしないと」と思って、活動的になるため、家族は意外と気が付かないこともあるようです。遠距離介護は、生活の一部しか見えません。そのため、自分では気付かない親の変化があるかもしれません。もし、少しでも認知症の兆候がみられたら、事故や怪我の可能性も高まるため、注意が必要です。

最後は、老々介護が成立しない場合です。夫婦で暮らしていると、高齢の夫の介護を、高齢の妻が行うこともあります。会社も退職し、趣味や旅行などで地域の人とコミュニティを持っている人もいるでしょう。しかし、介護者となると、必然的に家の中で過ごす時間が増えます。すると、筋力体力が衰えてしまうことも考えられます。また、心身の負担に耐えられず倒れてしまうこともあるかもしれません。介護をする人がいなくなると、被介護者も生活ができなくなってしまいます。こういった場合は、遠距離介護ではなく、呼び寄せ介護など他の対策を考えるべきかもしれません。